宇宙戦艦ヤマト完結編異変(下)












(上)より


「ディンギル艦隊まで、距離20万宇宙キロ」

 レーダー手が敵艦隊との距離を告げた。

「艦長、トライデント艦対艦ミサイルで撃破しましょう。もう射程に入っています」

 山内副長の進言に、西田艦長は直ちに決断した。

「よろしい。トライデント艦対艦ミサイル、発射用意!目標、ディンギル艦隊。大型の要塞艦には4発、残りの戦艦及び空母、水雷母艦には1発ずつ、計20発だ。駆逐艦などの雑魚は放っておけ。敵艦隊は密集体型を保っているのだから、誘爆が処理してくれる」

 トライデント艦対艦ミサイル、「阿武隈」の対艦攻撃用主戦装備である。名前の由来は、海神ポセイドンの鉾からだ。対艦用の小型対消滅弾頭を装備している(陽子と反陽子の反応。物質が全てエネルギーになる)ので、ディンギル艦程度なら、戦艦クラスでも一撃で粉砕してしまうだろう。西暦2400年代の戦闘艦なら、これを喰らっても何とかダメージコントロールを行う手段があるのだが、西暦2200年代の艦船にそんなものが装備されている訳がない。一発で致命傷を与えるのに充分な威力である。

「発射目標・・・・方位355度、上下プラスマイマス0、距離19万8千宇宙キロ、ディンギル機動艦隊。2−6−8方向より7−8−4方向に進行中、速度20宇宙ノット。発射弾数は20、移動要塞母艦に4発。大型空母6、ガルンボルスト級大型戦艦4、カリグラ級中型高速巡洋戦艦4、水雷母艦2には各1発ずつ。発射データ入力」

「阿武隈」の火器管制コンピューターに、次々とデータが入力されていく。



 一方、その頃ルガール2世の司令部では、上を下への大騒動である。

「軽巡洋艦1隻発見」

 以上の報告を残して、攻撃隊からの通信が途絶してしまったからだ。しかも、最後は「うわぁぁぁぁ・・・・・」という、悲鳴とも何ともつかないような叫びを残してである。

「第二次攻撃隊、発進準備急げ!早くしろ!全艦、進撃せよ!!」

 ルガール2世の目は血走っている。攻撃隊からの通信は、完全に途絶してしまったのだ。応答無し、という事は何をどう考えても、「攻撃隊は全滅した」という以外にはあり得ない。しかも、敵の戦力としては「軽巡洋艦1隻」を発見しただけだ。あれ程の規模の攻撃隊が、全滅させられたのである。徹底的に地球の軍事力は破壊したつもりだったが、どうやらその認識は誤りだったようだ。少なくとも、空母数隻を中核とした、機動部隊1グループ分の艦載機でもない限り、あの規模の攻撃隊を全滅させるなどできよう筈もない。おそらく、発見した軽巡洋艦と言うのは囮で、その艦に気を引きつけられている隙に、空母戦闘機隊の奇襲を受け、応戦する間もなくやられてしまったのだろう。そうでもなければ説明がつかない、自信を持って送り出した攻撃隊の全滅なのだから。こうなったら、こちらも全力で敵を叩き潰すだけである。地球人の蛆虫どもに、自分たちが負ける筈などあり得ない。先ず小癪な囮の軽巡洋艦を撃滅し、返す刀で姑息にも隠れている敵機動部隊を殲滅してくれる・・・・ルガール2世は、いきり立っていた。

 仮にルガール2世に、「攻撃隊を全滅させたのは、軽巡洋艦『阿武隈』1隻の仕業だ」と教えたところで、到底信じはしなかっただろう。この時代の軍事常識からしてそうである。しかし、軽巡「阿武隈」は西暦2203年にはあり得ない、途轍もない戦闘艦である。



「発射データ入力終了」

「トライデント艦対艦ミサイル、発射秒読み開始。5秒前、4、3、2、1、0。発射!」

 20発のトライデント艦対艦ミサイルが、次々と「阿武隈」の発射管から撃ち出される。目標まで約20万宇宙キロ。トライデントの速度なら、10分程度で走破する距離でしかない。また、トライデントも、「彗星」と同じようにステルス化されているので、ディンギルのレーダーで捉えるのは先ず不可能だ。



 しばらくして、ディンギル艦隊の見張り員は、飛来する一群のミサイルを発見した。噴射炎は最低限だったし、宇宙にとけ込む漆黒の塗装なので、かなり接近して来るまで発見できなかったのだが、ようやく見つけたのである。普通ならとっくにレーダーで発見できる筈だが、先ほどの偵察機と同じように、今回も捕捉できなかったようだ。

「ミサイル群接近!近い!!」

 見張りからに悲鳴のような報告に、ルガール2世は落ち着いていた。

「狼狽えるな。撃ち墜とせ!」

 ディンギル艦隊からは直ちに迎撃ミサイルが発射されたが、そもそもレーダーで捕捉できない相手には、レーダー誘導など全く行えなかった。赤外線誘導も、あまりにか細い「トライデント」の噴射炎の赤外線反応を捕捉できない。何しろ、「トライデント」は目標への接近後、噴射口に強力な冷却剤が添加される。もちろん、欺瞞の為である。また、テレビカメラを使用したイメージ誘導も、漆黒の塗装で宇宙空間に溶け込んでしまう「トライデント」には通用しない。結局、迎撃ミサイルは、あらぬ方向へ飛び去っていっただけだった。

 続いて対空ビーム砲がエネルギー弾を撃ち出し始めた。しかしこれも効果がない。やはりレーダー照準なので、レーダーが効かないのでは照準ができないのだ。仕方なく手動照準で撃っているのだが、そんなものではまぐれでもない限り当たる筈もない。しかも、接近してきた「トライデント」は一発ごとに高機動回避運動を開始した。西暦2400年代の「ゴールキーパー」をかわす為のジグザグ機動である。ますます以て、ディンギル艦隊の対空砲火が捕捉できるようなものではなかった。

「命中します!」

 先頭のミサイルが、艦列左の中型戦艦に吸い込まれるように向かっていく。閃光が走り、この戦艦は一瞬で爆発を起こした。

「ろ、6番艦、消滅!!」

 見張りが驚愕の叫びをあげる。そしてすぐ、それは恐怖に変わった。たった一発のミサイルが、戦艦一隻を吹き飛ばしてしまうとは!!

「ミサイル、更に接近!」

 各艦は勝手に回避行動を取り始めた。密集隊形だった上に慌てているので、衝突しそうになるもの、とんでもない方向に進路を変えようとするもの、逃げ出そうとするものが続出した。その間にも「トライデント」が着弾すると、確実に一隻ずつ粉砕されてゆく。

「慌てるな!愚か者ども!!」

 ルガール2世は、移動要塞母艦の艦橋で怒声をあげている。しかし今度は、4発のミサイルが移動要塞母艦に向かってくるのを、見張り員が発見した。

「撃て!撃墜しろ!!」

 ルガール2世は狂ったように叫ぶ。しかし、無駄な試みだった。それに、移動要塞母艦の巨体で、「トライデント」を回避できる訳もない。

 移動要塞母艦に、立て続けに4発のミサイルが着弾する。4つの閃光は一つになり、周囲を巻き込んだ大爆発になった。何をする間もなく、ルガール2世の肉体は火炎に焼き尽くされ、爆風に吹き飛ばされ、粉微塵になってしまう。更に、正確に着弾した他の「トライデント」が起こした爆発と重なり合って、ディンギル艦隊全体を巻き込んだ爆発になってゆく。全く以て密集体型が災いしたようだ。助かった艦艇は、ただの一隻もなかった。輝きと煌めきの中で、ルガール機動艦隊は全滅したのである。



「敵艦隊、反応消えました」

 前方に広がる爆発光を見ながら、レーダー手が機械的に告げた。

「地球艦隊、海王星軌道通過します」

 それを聞いて、西田が命令した。

「よし、退避せよ。『ヤマト』に発見される訳にはいかん」

「阿武隈」は全速で戦場から退避していった。もし発見された場合は、所属を明らかにするのは困難である。「西暦2400年から来た」、などと言われた場合、まともに取り合う方がどうかしているだろう。下手をすれば戦う羽目になってしまうかもしれない。そんな馬鹿げた事態は御免である。同じ地球人同士で戦う必要など、ある訳がないではないか。

 ところで、この時のディンギル艦隊の爆発光は、「ヤマト」でも観測されていた。しかし、それが何であるのかは、遂に解らずじまいだったのである。




第4章 敵艦隊見えず


 ディンギル艦隊が全滅した数時間後、遂に地球艦隊が冥王星空域に到達した。「ヤマト」を中心に巡洋艦、駆逐艦が輪型陣を組んでいる。「ヤマト」を死守することで、敵艦隊の撃滅に一縷の望みを繋ごう、という悲壮な決意であった。

「こちら、戦闘班長古代進。全乗組員に告ぐ。全艦戦闘配置につけ!」

 古代がマイクに向かう。

「総員戦闘配置につけ!」

 ヤマトの艦内スピーカーから声が響く。

「コスモタイガー隊、発進!全機対空対艦攻撃装備を用意!」

 古代が命令する。そして自分はコスモゼロに乗り込んだ。

「コスモタイガー発進!」

 ヤマトの発進口からコスモタイガーが次々と発進してゆく。そして、古代のコスモゼロはカタパルトから発進した。

「全機に告ぐ!ハイパー放射ミサイル発射艦は母艦ではなく、水雷艇の小艦艇と推定される。発見次第、いち早く破壊せよ!」

 古代が全機に告げた。地球防衛軍艦隊が全滅した戦闘では、ハイパー放射ミサイルは水雷艇から発射された事が解っている。大型の戦闘艦艇から直接発射された訳ではないのだ。

「全艦突撃体型を取れ!」

 沖田艦長が命令した。艦隊は単縦陣に組み直して進む。しかし、おかしなことに、いくら経っても敵の攻撃がない。いや、接触すらないのだ。冥王星空域に達したところで、直ぐにでも攻撃されると思っていたのに、意外な展開である。

 仕方がないので、古代はコスモタイガー隊を何編隊かに編成し、四方に散らせた。索敵行動に入ったのである。だが一時間経っても二時間経っても、全く敵発見の報告はない。

「一体どうなっているんだ・・・・・敵の方が圧倒的に優勢なのに、全く攻撃して来ないなんて・・・・・」

 古代は不思議がる。何かの罠だろうか?いや、それはない。罠や囮作戦は、同等以下の戦力で大兵力の敵と戦う時に使うものだ。あれだけ優勢な機動部隊と水雷戦隊を持っている敵が、罠など使う訳がない。大兵力を素直に運用して、一気にこちらを叩き潰す正攻法が一番である。自分が敵の指揮官でも、そうするに決まっている。

「敵がいない訳がないんだ。加藤、もっと徹底的に探してくれ」

「了解!」

 コスモタイガーは懸命に敵を捜す。だが、見つからない。それも当然だろう。ディンギル艦隊はすでに、「阿武隈」のトライデント艦対艦ミサイルの攻撃を受け、全滅しているのだ。この世から存在を消されてしまったものを、いくら捜しても発見できる訳はないだろう。しかし、そんな事は、古代に解る訳もなかった。未来勢力の介入で敵が叩きのめされてしまった、など想像の範囲外の出来事なのは間違いないのだから。



「艦長、敵艦隊の撃滅には成功しましたが、まだ難物が残っていますね。水惑星『アクエリアス』をワープさせている、ディンギルの巨大都市衛星『ウルク』が。ここは一つ、この『阿武隈』がアクエリアスの第19回目のワープアウト地点まで出向いて、積極的に敵を撃破したらどうでしょうか」

 山内副長の進言に、西田艦長も賛成した。

「よし、ワープ準備。アクエリアスワープアウト地点の空間座標は、データベースに記録されているものをそのまま使え。約150光年先だ」

「総員、ワープ準備!」

 艦長の命令が復唱され、「阿武隈」のワープ準備が進んだ。実際、そんなに時間がかかる訳ではない。ワープ距離も大したことはないし、ワープ用のエネルギーコンデンサにエネルギーをチャージするのも、「阿武隈」のような軽巡クラスの艦艇なら、1分もかからないからだ。そのへんはやはり、西暦2200年代に比べれば、かなり進んでいる。

「ワープ準備よし。距離150光年、アクエリアスワープアウト地点」

「秒読み開始。ワープ5秒前、4、3、2、1、0。ワープ!」

「阿武隈」はワープし、太陽系内から消えた。




第5章 ディンギル艦隊の最期


 数時間後、ようやくコスモタイガーの一編隊が敵艦隊を発見していた。しかしそれは、スクラップとなり、残骸そのものになってしまっている、徹底的に破壊された姿だったのだ。

「何者かとの交戦の結果としか思えません。徹底的に破壊されています。この分だと、生き残りなど一人もいないでしょう。ひどいものです」

 コスモタイガー隊隊長の、加藤四郎からの報告に、ヤマトのスタッフは首を捻って考え込んでしまった。戦うべき敵はすでに全滅しているという。もちろん、敵が全滅したことは、喜ばしいことである。しかも、味方の被害は全くない。だが、一つ問題が残っている。一体どこの誰が、あの敵艦隊を全滅させたのか?あれだけの規模の大艦隊を全滅させてしまうとは、とんでもない戦力を持った何者かが存在する、という事だ。しかも、「ヤマト」以下の地球艦隊が手も足も出ない、ハイパー放射ミサイルを持っている敵が、このような目に遭うとは。現時点のヤマトを、遙かに上回る戦力を持っている敵が!・・・・ヤマトでさえ、勝利の見通しは立てられない苦しい戦い、と覚悟を決めていたところだったのに。敵を全滅させた何者かは、恐るべき戦力を持っているとしか思えないところだ。

「何者がやったのかは、ワシには解らん。しかし差し当たって、その『何者か』を恐れることはあるまい。『敵の敵は味方』とも言うことだ。それにもし、その『何者か』が、我々に敵意がある相手だったら、とっくに攻撃されているだろう。あれだけの敵艦隊を手もなく捻れる連中だ。我々の存在が知られてない訳はない。ところが、現在のところ、我々は無事だ。その『何者か』について、心配する全くないからだ、とワシは思う」

 沖田艦長が言った。

「とにかく、第一次作戦は終了した。『何者か』のお陰で、やることがなくなったからな。これより第二次作戦に移る」

 ヤマトのメインスタッフは中央作戦室に移動した。床のパネルに、アクエリアスの軌道が映し出される。島航海長が説明を始めた。

「アクエリアスは、依然24時間毎の周期でワープを続けており、現在まで18回のワープを終えて、地球から300光年の距離にいます」

 沖田が頷く。

「あと2回のワープを終えると、地球からは130億キロの位置に現れ、そこからは1/2光速の速度で進み、24時間後には地球の至近距離を通過する訳です」

 それを受けて、真田技師長が話す。

「そうなったら、地球は水没してしまう。20回目のワープを許したら万事休すだ」

「20回目のワープまでに、アクエリアスに行って、ワープを止めなければならない」

 古代が力強く断言した。更に、島が受ける。

「うん。19回目のワープアウト地点なら、地球まで150光年の距離があるし、地球までやって来るのに300年の余裕がある」

「あと数時間でアクエリアスは19回目のワープをする筈だ。その出現点に先回りして勝負を掛けよう。島、ワープ機能の整備は?」

 沖田の問いに、島が答えた。

「はい、いつでも、どんなワープでも可能です」

「波動砲も万全です」

 古代も付け加えた。

「真田技師長、ハイパー放射ミサイルの防御システムは?」

 沖田の問いに、真田は苦しそうに答えた。

「あと一息で開発できます。次の戦闘までには、何とか」

「真田君、解っているだろう。地球防衛軍の戦艦はあれの為に全滅し、ヤマトも大損害を受けた。防御システムがなければ、ヤマトは素手で刃に立ち向かうようなものだ。絶対に間に合わせてくれ」

「はっ」

「全艦、出撃準備にかかれ!」



 一方、その頃「阿武隈」は、アクエリアスの第19回目のワープアウト地点に到着していた。しかし、何もない。まだアクエリアスはワープしてこないのだ。

「艦長、まだ敵はワープアウトして来ません。どうせなら、ワープ空間に入って、空間内で捕捉して撃滅しましょう。一方的に攻撃できます」

 西暦2400年代では、ワープ空間内の戦闘も行われている。とは言っても、異星人との戦闘があった訳ではないので、実戦で証明されている訳ではないのだが。理論的にはとっくに完成している技術で、演習も何度も行われている事でしかない。ワープ空間内での探知、接敵、攻撃は容易なことなのだ。もちろん、西暦2200年代では、そんなことは不可能である。夢物語でしかない。

「うむ、そうしよう。今度は相手がデカ物だからな。それだったら、相手の反撃は考慮しなくてもよい事だし」

 山内副長の進言に、西田艦長はすぐに決める。



 その頃、「阿武隈」のいる位置から、150光年先、地球から300光年のあたりでは、水惑星アクエリアスが、1/2光速の速度で、地球に向かって進行していた。それを、瀬戸内の淡路島ほどもある、巨大な飛行物体が追跡していた。ディンギルの都市衛星、ウルクである。彼らの母星ディンギルは、太陽系から3000光年の位置にあるアンファ恒星系第4惑星だった。しかし、水惑星アクエリアスの接近により、大量の水がディンギルに降り注がれた。その結果、ディンギルの特殊な鉱物組成が大量の水に耐えきれず、遂に爆発を引き起こしてしまったのである。彼らは、水没するディンギルから艦隊とともに都市衛星ごと宇宙空間に避難したものの、帰るべき星を失ってしまったのだ。母星を失った今、新しい移住先が必要だった。そして、その移住先に地球を選んだのである。ウルクの機能とエネルギーを利用してアクエリアスを強制的にワープさせ、地球に接近、水没させる。それによって人類を絶滅させ、その後に地球に棲みつこう、というのがディンギル人たちの計画だった。

 その都市衛星ウルクでは、ルガール・ド・ザール将軍の艦隊が、全滅したという悲報を受け取っていた。

「大神官大総統閣下。残念なご報告をしなければなりません。ルガール将軍の艦隊は全滅し、将軍は戦死されました」

 幕僚の一人が報告した。

「将軍には力が無かっただけの事。弱者は滅びて当然」

 ルガール大神官大総統は、当然の如く頷く。まるで何の感情も無いかのように。ディンギルの掟では、力が全てである。大神官大総統の息子だろうと、弱い者は滅びるだけだ。また、敵に敗れて死んでしまうような弱い息子には、用はない。

「ワープ光線、発射します!」

 ウルクから、アクエリアスへのワープ光線が伸びる。この光線でアクエリアスのコアを揺さぶってワープさせるのだ。そしてその後をウルクが追いかける。惑星をワープさせるので、膨大なエネルギーを必要とする。その為24時間置き、かつ20回という限度があるワープなのだ。

「アクエリアス、19回目のワープまで3分」



 一方その頃、ヤマトもワープ準備に入っている。

「ヤマト発進!ワープ準備に入ります」

 しばらくして、ヤマト以下全10隻、ワープの準備が完了した。

「5、4、3、2、1、0。ワープ!」

 地球艦隊は、ワープによりかき消すように消えた。



「ワープコントロール装置、スイッチオン!」

 アクエリアスは速度を増し、ワープして消える。ウルクも追うようにワープした。



「ワープ空間内の重力場変動中、大規模です。惑星級の大質量の物体が、ワープ中という事です」

「よーし、水惑星がワープして来るぞ!これより本艦はワープ空間内に進入。敵を攻撃する!」

「阿武隈」は通常空間からかき消すように消え、ワープ空間に進入した。すぐにアクエリアスとウルクを発見する。「阿武隈」はアクエリアスを軽くやり過ごし、ウルクに接近した。

「砲撃開始!」

「阿武隈」が主砲射撃を開始した。155mm3連装ビーム砲3基9門。もちろん、口径は小さいので大した威力ではないが、発射速度は相当速い。それに、「大した威力ではない」のは西暦2400年代においての話である。西暦2200年代においては、充分過ぎる破壊力だ。その上速射性能が際だっているので、ウルク上の軍事拠点を片っ端から叩き潰して行く。

「敵のワープ光線発射指揮所と、ニュートリノビーム発射器を特に叩きのめせ!」

 ニュートリノビームは、都市衛星ウルクの主要兵器である。発射器が旋回しながらニュートリノビームのエネルギーフィールドを作って防御幕とし、または目標に向かって直接照射する。撃たれた相手はニュートリノに貫かれ、蒸し焼きになってやられてしまう、という寸法だ。実際、史実のヤマトは、このニュートリノビームにやられそうになっている。たまたまヤマトのエンジン口から波動エネルギーが漏れていた事により、エネルギー防御幕が形成され、助かっただけなのだから。

「阿武隈」の主砲は、これらの目標を徹底的に叩き潰し始めた。ニュートリノビーム発射器が片っ端から爆砕され、消滅して行く。ワープ光線発射指揮所も、都市の前部にあるものだけではなく、後部の神殿にあるサブシステムまでにも、「阿武隈」の主砲が炸裂した。これらを完膚無きまでに破壊すると、今度は手当たり次第に砲撃を加える。何しろ、相手は全く反撃できないのだ。一方的にいたぶっているだけである。

「よーし、もういい。離脱しろ!」

 西田大佐の命令で、「阿武隈」はウルクから離れた。そして、少し離れた空間にワープアウトする。ここまでやれば、後はヤマト以下の地球艦隊に任せてもいいだろう。「阿武隈」はウルクに致命的な損害を与えた。これ以上すべき事は何もない。

「アクエリアス、ワープアウト!」

 レーダー手が言い終わらない内に、水惑星アクエリアスが幻想的な美しさをたたえ、現れた。続いて、都市衛星ウルクが出現する。遠目にも、かなりの破壊を受けているようだ。煙も噴きだしている。

「どうやら、本艦の攻撃は、上手くいったようですね」

 山内副長が呟いた。西田も無言で頷く。



 一方、ウルクの方では、ただごとではない。ワープアウトしたと思ったら、ウルク自体が深刻な機能不全に陥っているのだ。

「だ、だ、大神官大総統閣下、た、た、た、大変です!!都市衛星各部の機能が、著しく低下しております!!ニュートリノビーム発射器、全器使用不能。アクエリアスワープシステム、作動不能。サブワープシステム、これも作動不能。防空砲台、99%が使用不能。艦艇発進口、完全破壊。ウルクの戦闘能力は、健常時の5%以下です!!」

 これを聞いて、さすがのルガール大神官大総統も仰天した。

「何だと?!何がどうなったら、そのような莫迦な事になるのだ!ワープ前には何ともなかったではないか!?」

 間もなく、指揮所のビデオスクリーンに、映像が表示される。その光景を見て、ルガール総統は声も無くなった。ウルクの各所は無惨にも破壊され、叩き潰され、激しく抉られている。ニュートリノビーム発射器は全て消失し、発射器があった筈の場所は、クレーターから煙が吹き出しているだけだ。防空砲台も片っ端から叩き潰されている。更に、もっとも重要なアクエリアスのワープシステム指揮所が、無惨にも破壊されていた。後部の神殿も破壊されているので、これではアクエリアスをワープさせる事はできない。

「どういう事なのだ!これは一体、何がどうなっているのだ!!」

 もはや、ルガール総統も、混乱の極みにいるだけである。



 そこへ、ヤマト以下の地球艦隊がワープアウトしてくる。但し、アクエリアスの前面にだった。ヤマト以下の各艦は、アクエリアスの幻想的な美しさに魅せられ、アクエリアスに降下した。アクエリアスの大気圏内をしばらく飛んでいると、「クイーン・オブ・アクエリアス」が古代たちに呼びかけてきた。そして、「敵はここにはいない。この惑星の後方にいる都市衛星、そこにいるディンギル人が、ヤマトの敵である」、と。それと、驚くべき秘密を告げられた。ディンギルは、そもそも地球でノアの大洪水により、山の上で最期を待つだけになっていた人たちが、原ディンギル人に助けられ、連れて行かれた先の惑星を征服して、原ディンギル人を滅ぼしてうち立てた国だと言うことを。彼らは地球人の末裔だったのだ。

 その間に、コスモタイガー隊が、アクエリアスの後方にある都市衛星ウルクを発見していた。

「ヤマト、敵衛星に向け、発進!」

 沖田が力強く命令する。コスモタイガーが先行し、他の艦もヤマトに続く。しかし、もうウルクには、ヤマトに対抗すべき術があまり残っていない。かろうじて無事だった艦載機発進口から艦載機を出す事と、同じく無事だった発進口から水雷艇を出す事だけである。



「地球艦隊、接近!」

 この報告を聞いて、ルガール大総統は直ちに艦載機と水雷艇の発進を命じた。上手くすれば、これで敵を撃滅できるかもしれない。そうなれば、ゆっくりウルクの損傷を修理して、またアクエリアスをワープさせればいいのだ。必殺兵器・ハイパー放射ミサイルさえあれば、地球艦隊など恐るるに足らぬ筈である。



「敵水雷艇、戦闘機隊発見!これより攻撃にうつる!」

 コスモタイガー隊は、必死に水雷艇に取り付き、次々と撃破して行く。しかし、敵戦闘機も、必死にそれを妨害する。水雷艇が敵艦隊に取り付けなければ、ディンギルの勝利はないのだ。

 そして、結局はディンギル戦闘機隊の体を張った防戦が物を言った。水雷艇隊は地球艦隊に肉薄し、ハイパー放射ミサイルの射程に収める。これで、ミサイルを放たれたら万事休すである。ヤマトの装甲でも一発で破り、強力な宇宙放射線を浴びせて人員を殺傷し、爆発威力も高い極めて危険なミサイルなのだから。

「対ハイパー放射ミサイルビーム、たった今完成しました!」

 息せき切って艦橋に飛び込んできた真田技師長が報告した。

「真田さん、テストは?」

「そんな暇あるか!!」

 尋ねた古代を、真田が怒鳴りつける。

「敵水雷艇、ハイパー放射ミサイル、発射!」

 敵の放った、ハイパー放射ミサイルが次々とヤマトに接近してきた。

「対ハイパー放射ミサイルビーム、発射!」

 ヤマトの艦首下部、全天球レーダーの下に取り付けられたビーム発射器から、ビーム弾が発射される。それは、ミサイルの真っ直中で拡散し、ミサイルを絡め取るようにまとわりつく。そして、そのビームエネルギーにまとわりつかれたミサイルは、次々と自爆していった。

「や、やった!」

 古代が歓喜の声をあげた。あれだけ苦しめられたハイパー放射ミサイルに、ようやく一矢報いたのだ。

「喜ぶのはまだ早い!続けて行くぞ!!」

 真田は操作盤を動かし、立て続けにビームを発射した。ヤマトの艦首下部からビームが撃ち出される度に、ハイパー放射ミサイルは絡め取られ、自爆してゆく。遂に、ただの一発も地球艦隊に辿り着くことはなく、自爆して果ててしまったのだ。



「う、うぬっ!!何とした事だ・・・・・・・」

 ルガール大総統が呻いた。もうウルクにはヤマトに対抗する術がない。最大の防御兵器、ニュートリノビーム発射器は、完全に破壊されてしまっているのだ。また、戦闘艦発進口も、全て壊されてしまっているので、戦闘艦を発進させてヤマトを迎撃する事もできない。防空砲台すら全滅しているのだ。艦載機と水雷艇が通用しなかった今、ウルクにはヤマトと戦う手段がない。

「全艦載機、総力を持ってヤマトを攻撃せよ!」

 時間稼ぎくらいにしかならないが、ルガール大総統は艦載機の攻撃でヤマトを足止めするよう命令した。そして足早に、指揮所から立ち去った。これ以上ウルクに居てもやられるだけである。脱出を考えるべきであった。原ディンギル型UFO「プレ・ノア」に乗り込み、ウルクから離脱しようというのである。



 その間、ヤマト以下の地球艦隊は、うるさく付きまとってくる敵艦載機隊を、コスモタイガーと対空砲火で蹴散らしながら、ウルクに接近していた。

「艦首を敵衛星に向けよ!波動砲、発射用意!!」

 沖田が命令した。

「波動砲、発射用意!目標、敵衛星!!」

 古代が復唱する。

「エンジン停止、波動砲へのエネルギー充填」

「波動砲への回路を開け」

「回路、開きます」

「セーフティロックゼロ、圧力上昇中。あと0.2」

「ストライカー圧縮機作動、最終セーフティ解除」

「タキオン粒子出力上昇」

「波動砲、用意!」

 以降は古代の独壇場だ。

「ターゲットスコープオープン!電影クロスゲージ明度20。目標、前方三千宇宙キロ、敵衛星。発射10秒前、対ショック、対閃光防御!!9、8、7、6、5、4、3、2、1、0。発射!!」

 古代の指が、波動砲の引き金を引いた。一瞬の間があって、ヤマトの艦首から強力な青白い光の束が撃ち出される。一直線に伸びて、ウルクに突き刺さった。この凄まじいエネルギーの噴流に、ウルクの岩盤は到底抵抗する事はできず、爆発を繰り返しながらバラバラに分解され、消滅してゆく。あの苦難極まったイスカンダルへの旅、ヤマトの建造直後の、一番最初の波動砲発射で破壊した木星の浮遊大陸のように、ウルクは崩壊していった。

「やったぞ!これで敵はアクエリアスをワープさせる事はできない!」

 古代以下ヤマトのスタッフは、艦橋で歓声をあげている。



 ・・・・・・しかし、波動砲命中によるウルク崩壊の直前、ルガール大総統以下はウルクから脱出していた。旗艦の「プレ・ノア」以下、岩石ロケット群がウルクの岩盤を爆破して出現し、逃げ出したのだ。

「おのれ・・・・おのれヤマト!いつの日か、必ずこの借りを返してくれるわ!!」

 ルガール大総統は、怒りに燃えていた。都市衛星ウルクを破壊されてしまっては、もうアクエリアスのワープを行う事はできない。「プレ・ノア」と岩石ロケットで、ヤマト以下の地球艦隊に立ち向かったところで、勝てる見込みもない。ここは脱出して勢力を盛り返し、いつの日かヤマト、そして地球に復讐の刃を見舞うだけである。



「あ、艦隊らしき反応多数、出現しています。敵衛星崩壊直前に脱出したようです。逃げて行きます!」

 森雪がレーダー画面を見て報告した。波動砲の命中によるウルク崩壊前に、脱出した「プレ・ノア」及び岩石ロケットを捕捉したのだ。

「追跡しろ。禍根は断っておかねばならん。彼らは、必ずヤマト、そして地球への復讐を企てようとするだろうからな」

 沖田艦長は命令した。残酷なようだが、地球の安全と平和の為には仕方ない。相手は地球人類の絶滅を図っていたのだ。その目論見が一時失敗したくらいで、諦めるとは思えなかった。

「ヤマト、全速前進!敵艦隊を追跡します!!」

 古代の指示で、ヤマト以下地球艦隊全10隻は、岩石ロケット群を追いかけ始めた。「矢矧」を先頭に、ヤマトがしんがりである。さすがに、ヤマト以外の新型艦の方が加速がいいのだ。それに、「戦艦」のヤマトほど重い艦は他にはないので、ヤマトがどん尻になるのは当然だった。



「ワープ用意!」

 ルガール大総統が命令する。敵が追跡してくるようだが、それまでには何とかワープで逃げられそうだ。ワープしてしまえば、それ以上敵の追跡を受けることはないだろう。

 その時である、突然、岩石ロケットの一つが爆発した。

「何事だ!」

 ルガール大総統が叫んだ。すぐに、前方にかなりの規模の艦隊が展開している事が解る。後方の地球艦隊とは違う、別個の存在だ。



「交信です。ビデオパネルに切り替えます」

 相原通信班長が言った。次の瞬間、ヤマトのメインパネルには、ガルマンガミラス帝国、デスラー総統の姿が映っていた。

「デスラー!生きていたのか!!」

「古代。久しぶりだな。あれだけの敵を打ち破るとは、いつもながらさすがだ。遅ればせながら、我々も助太刀しよう」

 デスラーはそれだけ言うと、胸の薔薇を手に取り、掲げた。古代の友情に対する返礼である。思えば、今回のヤマトは、銀河の衝突により、ガルマン本星と連絡が取れなくなり、ヤマトが調査に向かった事から、全てが始まったのだ。壊滅したガルマンガミラス本星の上空で、デスラーも死んでしまったものかと思っていたヤマトのスタッフだったのだが・・・・・・



「ええい、前方の小癪な艦隊を、叩き潰せ!」

 怒りに燃えたルガール大総統が命令した。岩石ロケット群は、デスラー艦隊に向かって行く。



「デスラー砲、発射!」

 デスラーが引き金を引くと、強力な光の束が「プレ・ノア」に向かって撃ち出された。デスラー砲は、ガミラス式の波動砲である。それは一直線に伸び、「プレ・ノア」に突き刺さった。

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・」

 絶叫とともに、ルガール大総統は爆発の中に消えていった。そして、周辺にいた岩石ロケット多数も、デスラー砲による爆発に飲み込まれる。しかし、散開していた岩石ロケットの数は、まだまだ多い。



「拡散波動砲、発射用意!」

 ようやく戦場に到着した「矢矧」の艦長が命令した。軽巡の「矢矧」にも、小口径とは雖も一応波動砲が搭載されている。しかも、対艦隊用には、最高に効果のある拡散波動砲だ。

「発射準備完了!」

 ヤマトに比べて新しいので、「矢矧」の波動砲エネルギー充填は速い。

「よし、発射!」

「矢矧」の艦首から、青白い光の束が伸びる。それは岩石ロケット群の目前で一点に集中し、次いで広範囲に飛び散った。拡散波動砲のエネルギー弾多数が降り注ぐ中で、岩石ロケット群は次々爆発を引き起こしてゆく。9割方がそれで壊滅し、それでも残った敵は、デスラー艦隊と地球艦隊が掃討した。


 ・・・・・・・そして、戦闘は全て終了した。ディンギルは全滅したのである。ヤマトは地球に一報を入れ、帰途に着いた。ただ一つ、謎を残して。




エピローグ 多次元宇宙(パラレルワールド)


「我々は歴史に介入してしまいました。この後、どうなるのでしょう?」

「阿武隈」の山内副長は、ディンギル艦隊の最期を眺めながら、艦長に話し掛けた。

「さあな。なるようにしかならんよ」

 西田が答える。どう見ても、完全に歴史が変わってしまった。本来ならば、都市衛星ウルクの破壊には成功するものの、アクエリアスの20回目のワープ阻止には失敗してしまう筈だ。地球に再接近したアクエリアスから伸びる水の柱を断ち切る為、ヤマトはトリチウムを満載し、波動砲のエネルギーを艦内に逆流させ、自爆して終わるのが、最期なのである。ところが、アクエリアスの20回目のワープは阻止され、ここでディンギル艦隊も全滅した。これでは、歴史の流れと全く違う結果になってしまっている。

 その時である。またもや「阿武隈」は、あの謎の現象に捉えられたのだ。艦全体が光点に取り巻かれ、すっぽり覆われてしまう。微振動も始まった。

「副長、これで元の世界に戻れるかも知れんぞ」

 西田が楽観的な口調で言う。

 数分間続いた光と微振動が終わった後、「阿武隈」は完全に元の位置に戻った。窓の外には「秋雲」の姿も見えるし、レーダーには演習に参加した第22戦隊の艦艇が、前と同じ反応で映っていた。あまりに突然に、時代を飛び越え、150光年の距離をも飛び越えて、元の位置に戻ったのだ。冥王星も近くに見える。

「はは、はははは、はっはっはっはっはっはっはっはっ・・・・・」

 西田が笑い出す。つられて艦橋の全員が笑い出した。

「おい、ちょっと戦史を調べてみろ」

 しばらく笑ったあと、西田が指示した。あれだけ派手に介入して、歴史を改変してしまったのだ。おそらく、ヤマトの戦史は、西田たちが知っていたモノとは、大幅に違ってしまっているだろう。

 すぐに軍用通信ネットワークにより、取り敢えず木星ガニメデ基地のホストコンピューターに、「阿武隈」のメインコンピューターが接続された。戦史を検索してみる。

 しかし、ヤマトの戦史には、何の変わりもなかった。アクエリアスの20回目のワープを阻止できず、ヤマトは水の柱を断ち切って自爆。「阿武隈」の介入など、どこにも載っていなかった。

「どういう事でしょう?我々は何をしたのです?」

 山内副長が不思議そうに言う。しばらく考え、西田艦長が答えた。

「多次元宇宙論というのを知っているかね?この世界は一つだけでなく、少しずつ違う世界が、無数に重なり合って存在している、というものだ。我々が行った世界は、今我々が存在している世界の過去ではなく、少し違う、別の多次元宇宙だったのではないかな。例えば地球が完全に敗北し、人類は全滅、ディンギル人に地球を占領されてしまう、という世界があるかも知れんし、我々の介入が無くても、西暦2203年の地球艦隊だけで、ディンギル艦隊に圧勝する世界があるかも知れん。その多次元宇宙の、一つの世界に我々は行ったのだろう」

 艦橋内の全員が、それを聞いていた。そうでもないと、「阿武隈」に起こった事の解釈ができないだろう。

「ところで、我々の『過去への旅』については、どう報告しましょうか。何しろ、エネルギー弾にミサイル等、弾薬を凄まじく消費しましたからね。別に演習では使った訳ではないのに。『何でこんなに弾薬を消費したんだ』とロジスティクスに突っ込まれたら、答えようがありませんよ?」

 山内が困ったように言う。まさか本当の事は言えない。「気が狂った」と思われるのがオチだろう。

「ふう、しょうがないな。事故が起こって廃棄した事にでもするしかないだろう。そのへんの理由は、適当に作ってくれたまえ」

 西田の答えに、山内は諦めたように呟いた。

「まあ、そうですかね。それしかありますまい。しかし嫌ですね、またロジスティクスの担当に、イヤミ言われそうだなこりゃ、トホホホホホホホ」




宇宙戦艦ヤマト完結編異変  <完>















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